【VIカード物語】ep1「最高神ゼウス」

雷光の誕生:若きゼウス

 夜空の果てに、無数の星々が瞬く神々の都、オリンポス。その頂に立つ宮殿で、若きゼウスは日々を過ごしていた。後に最高神となる彼は、すでに並外れた力を持っていたが、神としてまだまだ未熟だった。自己中心的で、己の力を過信し、時には他の神々に迷惑をかけることも少なくなかった。彼の雷を操る才能はまだ覚醒しておらず、その苛立ちが周囲にも伝わっていた。

 当時のオリンポスを統治していたのは、ゼウスの父であるウラノスだった。しかし、その統治は絶対的で、時に傲慢なものだった。ゼウスは父のやり方に反発を感じながらも、自らの力で何かを変えられないかと模索していた。

 ゼウスの周りには、様々な神々がいた。中でもポセイドンとは特に馬が合わず、些細なことで口論が絶えなかった。

「この狭いオリンポスで、貴様と顔を突き合わせるのもウンザリだ」

 ウラノスはゼウスと犬猿の仲であったポセイドンを海の王として深海へと送ることにした。他にも、利口で何を企んでいるかわからないハデスの態度も気に食わなかった。いつか冥界タルタロスに送ってやろうと心に決めていた。彼らの間の確執は、この頃からすでに芽生え始めていたのだ。 

 地上の世界では、オリンポスの神々とは異なる存在たちが生きていた。ゼウスは度々地上へと赴き、エルフの森に住む古き友の樹・アダムと親交を深めていた。樹齢2000年を越えると言われるアダムは、世界の歴史全てを見てきた賢者であり、ゼウスが赤ん坊の頃からその非凡な才能に気づき、時には厳しく、時には優しく、神として、リーダーとしての生き方を教えてくれる存在だった。

「ゼウスよ、力とは、己のためだけでなく、誰かのために使うものだ。」

 アダムの言葉は、自己中心的なゼウスの心に、ゆっくりとだが確実に染み込んでいった。


世界の歪みと魔界の胎動

 ゼウスは、アダムから聞いた話を思い出す…。


 この世界の全てを創り出した大地の女神ガイアは、その創造の過程で、ある歪みを生み出してしまっていた。世界に色を与え、生命を育む中で、彼女の意図しない「黒き闇の世界」、すなわち魔界が誕生したのだ。魔界は、世界の均衡を脅かす存在として、当時のオリンポスの王ウラノスによって、一時的にタルタロスの神殿に厳重に封印されていた。その封印を守っていたのは、タルタロスの神殿に置かれた巨大な神殿の鋼巨像だった。
 しかし、魔界の力は想像を絶するものだった。それは、ガイアやウラノスですら抑えきれない、悪が凝縮された力だった。そして、その魔界の力によって生み出された恐るべき存在が現れる。ダーク・プラネテス。植物からできた巨大な悪木であり、大地を蝕み、闇の根を世界中に張り巡らせる。ダーク・プラネテスは、ガイアが創り出した世界の歪みから生まれた、まさに「原初の巨悪」だった。


 話を聞いた当時は、半信半疑で面白い物語として聞いていたゼウスだったが、ある時それが現実であることに気付く。ダーク・プラネテスの魔力は、タルタロスの神殿の封印をも揺るがした。神殿の鋼巨像は、本来魔界を封印するための番人であったはずが、魔界の強大な力に飲み込まれ、その乗っ取られてしまったのだ。鋼巨像は、操られるがままにオリンポスへと侵攻を開始した。

 鋼巨像の咆哮がオリンポスに響き渡り、大地を揺るがした。当時の王ウラノスは、自ら鋼巨像と対峙したが、その圧倒的な力の前になす術もなく、打ち砕かれて命を落とした。オリンポスは、未曾有の危機に瀕していた。

 ゼウスがエルフの森から帰った時、すでにオリンポスは崩れ、父ウラノスは息絶えていた。ゼウスは鋼巨像を前にその怪力で立ち向かうが、ウラノスすら打ち砕かれた力の前に防戦一方となった。

 この戦いの物語を進める前に、少し時間を巻き戻そう…。

 ウラノスによってポセイドンが送られた海の底では、当時アトランティスという名の無法地帯が存在していた。イグニス・ドラゴンは、世界の海を浄化し、生き物を育む精霊ドラゴンだった。イグニスはアトランティスを浄化しようとした際、悪い海賊や魚人たちに捕まってしまった。ポセイドンは、当時のイグニス・ドラゴンを、その無法地帯から救い出したのだ。そして新海アトランティスを統治していた。その恩義から、イグニス・ドラゴンはポセイドンに絶対的な忠誠を誓っており、ポセイドンを信頼していた。

 そのイグニスから、ポセイドンはオリンポスのことを聞くことになる。

「ポセイドンよ、このままではオリンポスが、いや、世界が滅ぶぞ」

 ポセイドンは、嫌いなゼウスに歯軋りしながらも、イグニス・ドラゴンと共にオリンポスへ向かい、鋼巨像へと挑んだ。ポセイドンの三叉の槍が鋼巨像の体を打ち砕き、イグニス・ドラゴンが放つ浄化の水魔法が鋼巨像の内部を貫く。ゼウスはポセイドンとイグニスによって助けられた。激しい戦いの末、ついに神殿の鋼巨像は破壊され、その残骸がオリンポスの大地に散らばった。


覚醒の雷光と宿敵の出現

 鋼巨像を退けたものの、オリンポスには他の脅威が迫っていた。それは、ガイアの魔法が行き渡っていない砂漠の地から現れた悪魔、砂漠のデーモンだった。砂漠のデーモンは、生き物を食らうことで力を増す。オリンポスに住む神々を食えば、その絶大な力を手に入れられると考え、オリンポスへと攻め入ったのだ。

 デーモンの侵攻は突然だった。神々は迎撃に出たが、デーモンの素早い動きと、砂漠の魔力で操る幻影に翻弄された。その混乱の中、ゼウスの愛する女神メティスが、逃げ遅れて砂漠のデーモンに捕らえられてしまったのだ。

 ゼウスは叫んだ。目の前で愛する者が囚われる光景は、彼の心の奥底に眠っていた何かを呼び起こした。これまで自己中心的だった彼が、初めて誰かのために、心の底から戦う覚悟を決めた瞬間だった。ゼウスは必死に戦い、本体に迫った。しかし、デーモンは狡猾で、メティスを盾にしてゼウスの攻撃を封じた。

 デーモンの嘲笑が響き渡る。だが、その時、ゼウスの全身からまばゆい雷光が放たれた。それは、彼の中に秘められていた雷の力が、ついに覚醒した瞬間だった。これまで制御できなかった雷の力が、メティスを助けたいという純粋な願いによって、一つの形を成したのだ。

 ゼウスの咆哮と共に、彼から強烈な雷がほとばしった。その雷は、砂漠のデーモンを正確に捉え、一撃で打ち砕いた。デーモンは断末魔の叫びを上げて消滅し、メティスはゼウスの腕の中に無事に落ちてきた。これが、ゼウスが初めて雷の力を手に入れた瞬間であり、彼の伝説の始まりだった。

 しかし、本当の戦いはこれからだった。鋼巨像は破壊されたが、その背後には、ダーク・プラネテスという真の巨悪が控えていたのだ。


終焉の戦い、そして残された種

 ダーク・プラネテスは、すでにオリンポスにその闇の根を張り巡らせていた。そしてオリンポスだけではなく、世界各地には、魔界の種が人知れず植えられ、後の戦いへと繋がる兆候が見え始めていた。その巨大な姿は、オリンポスの空を覆い尽くすほどだった。

 ゼウスは、覚醒した雷の力を使い、ダーク・プラネテスへと挑んだ。彼の雷は、闇の根を焼き払い、悪木を粉砕した。しかし、ダーク・プラネテスは、その巨大な体から次々と新たな闇の蔓を生み出し、オリンポスを襲った。オリンポスの兵たちだけではなく、ポセイドンやイグニス・ドラゴン、スリナムの戦士たちも加勢し、神々と精霊は一丸となってダーク・プラネテスに立ち向かった。古き友の樹・アダムもまた、遠くから祈りを捧げ、ゼウスを鼓舞した。

「ゼウスよ!世界は、お前の雷を求めている…!」

 ゼウスは、アダムの言葉を胸に、自身の全てを賭けた。雷の力を最大限に高め、巨大な雷の槍を創造した。その槍は、オリンポスの空にまばゆい光を放ち、ダーク・プラネテスの本体へと突き刺さった。

 轟音と共に、ダーク・プラネテスの巨体が崩れ落ちていく。闇の根が引き剥がされ、世界に差し込んでいた闇が徐々に薄れていく。ついにダーク・プラネテスは、ゼウスの雷によって破壊され、完全に死滅した。

 オリンポスには平和が戻り、神々は歓喜に沸いた。ゼウスは、自らの力に過信することなく、皆と力を合わせて真に世界を救ったのだ。彼の雷の力は、これまでの自己中心的な性格とは裏腹に、世界を守るための正義の力として覚醒したのだった。


 この物語はこれで終わる…。そう思っていた。

 しかし、ゼウスたちは知る由もなかった。ダーク・プラネテスが死滅したとはいえ、その悪の種は、世界各地に人知れず残された。悪種は、後に魔王ハデスの手に渡り、ゼウスの息子であるダイス・ウォーカーの物語へと繋がっていくことになる。ゼウスの雷光は、新たな時代の幕開けを告げていたが、その陰には、まだ見ぬ脅威が潜んでいたのだった…。


 神々から認められたゼウスは最高神としてオリンポスを統べることになった。古き友の樹・アダムとの会話の中で、世界でただ一つの宝石レッド・ダイヤモンドについて知る。持つ者の願いを確実に叶える宝石レッド・ダイヤモンド。ゼウスはこの宝石が魔の手に渡らないよう、そして野心を持つハデスに渡らないよう、隠密に兵を動かすのだった…。


ep2へ続く…。

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